最近、不妊治療においてPGT-Aが行われることが増えてきました。
2回の胚移植で陰性だった場合でも割とすぐにPGT-Aを勧められることが増え、
患者さん側の戸惑いも多く、当店でもPGT-Aについての意見を求められることも多くなってきました。
ではPGT-Aとは何なのか、メリットやデメリットについて書きたいと思います。
PGT-Aとは着床前胚染色体異数性検査といい、着床前診断の一つです。
受精卵(胚盤胞)の細胞の一部を取り染色体数を調べる検査で、
染色体の異常がない受精卵を移植することで妊娠率や出産率を高めることを目的としています。
メリットとしては
受精卵の染色体異常を調べ、問題ない胚だけを移植するので
出産に至らない不要な移植を減らすことができ、
移植回数を減らしたり流産率を低下させることによって
身体的、精神的な負担を軽減させることができます。
また胚移植あたりの妊娠率は上昇します。
不妊治療の期間を短縮させ胚あたりの妊娠率を上げる、
いいことずくめの検査のように見えますが、様々なデメリット、問題点がわかってきました。
日本生殖医学会の生殖医療ガイドラインでは
・栄養外胚葉細胞を5~10個生検することが多いが、
胚の初期発生段階で発生する染色体不均衡分離によるモザイク現象のため、
生検細胞の所見が胚全体の状態を正確に反映しているとは断定できない
とあります。
どういうことかというと胚の中には正常な細胞と異常な細胞が混在し、
検査する細胞の染色体と将来赤ちゃんになる部分の染色体が異なることがあるので、
検査結果と胚が正常かは必ずしも一致しないことがあるということです。
誤判定率も5~15%あるといわれています。
・発育過程で胃数性細胞が排除され、正倍数性(2倍体)細胞のみで胚が形成される
胚の自己胃修復現象も指摘されている
つまり検査の時点では染色体異常のある胚でも
進んでいくにつれて正常な胚になることもあるとのことです。
上の2点だけでも出産にいたる正常な胚が廃棄されてしまう可能性があります。
それだけではなくPGT-Aにおいて一番大きな問題なのが
検査のため受精卵の細胞の一部を採取する際、
その時に受けたダメージによって胚がダメになってしまうことです。
PGT-Aでの正常胚の妊娠率は60~70%と言われていますが、
正常胚でも妊娠しない一番の原因が、検査時の胚への損傷と言われています。
ある不妊治療クリニックの院長先生にPGT-Aについてお話をおうかがいしたことがあるのですが、
先生はせっかくのいい受精卵がダメになってしまう可能性があるので
自分のクリニックではPGT-Aはしないと話されていました。
またPGT-A後の妊娠では通常のIVF妊娠と比較して
HDP(妊娠高血圧症候群)のリスクが高率との報告があり、
自然妊娠との比較では37週未満の早産、2,500g未満の低出生体重児、
HDP発症のリスクが高いとされています。
PGT-Aでは流産を繰り返す場合や移植を繰り返しても全く着床しない場合など、
原因を知る上で有効な検査だとは思いますが、
逆に妊娠→出産する機会を失ってしまうという大きなデメリットもあります。
不妊治療の現場ではクリニックさんによってはデメリットについては
あまり詳しく説明されてないような印象もあります。
PGT-Aはメリット、デメリットをきちんと踏まえた上で、
受けられるかどうか判断されることが大切かと思います。
貴文
漢方薬局 柚花香房
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