質の良い卵子が子宮内膜に着床することで妊娠は成立します。妊娠するためには子宮内膜のちょうどよい厚さ、硬さ、着床能が必要です。
「ホルモン剤を使っても内膜が薄い、厚くならない」、「なかなか着床しない」といったご相談をお伺いすることがあります。
卵の状態はよいのに妊娠できないといったケースがあたります。
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子宮内膜の厚さ
内膜が薄くなる原因は、年齢によるもの、流産手術(子宮掻破)、黄体機能不全などが考えられます。体外受精・顕微授精による移植の際、子宮内膜の厚さが重要になってきます。
不妊治療専門のクリニックでは移植時の内膜の厚さが7mmもしくは8mmないと移植しないという基準が設けられています。
7mm以下での移植は着床率がかなり悪くなるというデータが出ているためです。不妊治療において、エストロゲン製剤を用いて内膜を厚くさせることが多いようですが、それでも効果が見られない場合は、ガン治療などに使用されるG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子製剤)が用いられることがあります。
東洋医学では、子宮内膜は陰血と考え栄養(陰血)を補うと言った補血の方法がとられます。また、力不足で陰血を内膜に転化できないケース(腎虚)も存在します。そういう場合は補血の漢方、補腎の漢方を用いて内膜を厚くしていきます。それでも厚くならないケースも存在します。
そういった場合は、内膜の成り立ち、肺や脾などの臓器から考えて根本的にアプローチする方法をとっていきます。
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内膜の硬さ
西洋医学では内膜の硬さについてはこれといった検査や治療は行われていませんが、厚さとともに着床しやすいやわらかさをもった子宮内膜が必要と考えられています。東洋医学的に考えると瘀血(血の滞り)、気滞(気の巡りが悪い)が関係しています。
原因としては、緊張やストレス、子宮内膜症や子宮腺筋症などの疾患、手術による内膜の硬化、喫煙などが考えられます。治療としては活血の漢方、疎肝理気の漢方を使用します。
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着床
卵のグレードが高くても、内膜が厚くても全く着床しないケースがあります。着床しない原因と考えられているのが免疫のバランス、子宮内膜の炎症、子宮の痙攣です。
免疫について注目されているのがTh1/Th2のバランスです。
西洋医学では免疫抑制剤のタクロリムスが用いられています。
東洋医学では免疫の狂いは瘀血と考え活血剤を使います。
ですが体外受精による移植にはもう少し繊細な治療が必要になり免疫を調整する植物エキスを使う場合もあります。
炎症については、炎症体質など炎症が関わる疾患が増えています。子宮鏡などで検査しますが、炎症が増えている原因としては、食生活、ストレス、睡眠が考えられます。
東洋医学では炎症は熱と考えますが、なぜ熱が起こっているのかというところからアプローチする方法や体を冷やさず患部の熱だけとる清熱の方法があります。
痙攣については最近海外の論文で発表された不妊治療の分野でもまだ新しい原因です。東洋医学では痙攣は「風」と捉えますので、去風の漢方に原因を改善する漢方を足して治療することになります。
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