漢方薬の中で有名な処方一つに補中益気湯があります。
食欲がない、胃腸虚弱、疲労感、風邪をひきやすい、病中病後の体力の低下など他にも様々な症状に使われ、病院で処方されることも多いかと思います。
補中益気湯:黄耆、人参、茯苓、甘草、柴胡、升麻、当帰
主薬は補気薬の黄耆で柴胡や升麻と一緒に用いることで、升提作用で弛緩した筋肉を持ち上げ正常化してくれます。
さらに人参、白朮、甘草といった補気薬の働きで消化吸収機能を高めてくれます。
そのため胃・腸アトニー、子宮脱、脱肛、膀胱の収縮力の低下、手足がだるい、体がしんどいなどの症状に使われます。
気の不足した気を補い、気虚の状態を治す処方です。
黄耆は固表止汗作用があるため、補中益気湯は少し動いただけで汗が出やすい人や寝汗をかきやすい人にも効果があり、黄耆と当帰、人参の組み合わせは肉芽の促進するため、難治性潰瘍、褥瘡などにも使われます。
補中益気湯は体力がなく、疲れやすい人だけが飲むイメージがあるかもしれませんが、スポーツをする人や普段体力があり元気な人でもひどく疲労している時、症状や体質に合えば短期間服用したりすることはできます。
花粉症や子宮臓器脱の体質改善などで服用する場合もあります。
疲れてもない人がさらに元気になるために飲んでも効果は感じられないですし、かえって良くない反応が出ることがあるのでおすすめできません。
補中益気湯を飲むとお腹が張ったりして飲み続けられない、という方がたまにいらっしゃいます。
疲労感が強く夕方になると家事や仕事がしんどいといった方は気虚体質で気を補う漢方薬が必要なのですが、補中益気湯を飲むと不快な症状が出て飲み続けられないということがあります。
特に痰湿のある方は補中益気湯単独で飲む場合は、お腹が張ったりムカムカする方もいます。
また、血圧が高い方やむくみやすい方も気をつけたほうがよい場合があります。
補中益気湯でお腹が張ったりする方は量を減らしてみたり、理気の薬を足してみるという方法があります。
食欲不振、胃下垂、便秘や下痢しやすい、疲れやすいなどの症状の方に補中益気湯以外で使う処方には
六君子湯、香砂六君子湯、柴芍六君子湯などがあります。
これらの漢方薬には半夏、陳皮などを含むため、胃のムカムカやゲップが出やすい方にも使いやすい気虚の薬です。
一見自分に必要な漢方に見えても
体質によっては合わない場合もあります。
執筆者
井上 昌子
薬剤師、国際中医師、アロマセラピスト
漢方薬局 柚花香房
大阪府吹田市山田西3丁目57番20号ピアパレス王子101
問い合わせ:06-6816-9677
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